保釈請求をしてもなかなかスムーズに保釈許可が下りない方も多いと思います。このページでは保釈請求が却下された際に高等裁判所に控訴することにどのくらい効果や意味があるのかについて説明していきます。
控訴の仕組み
裁判ドラマなどでよく、判決を不服として「控訴(こうそ)だ!」と言っているシーンがありますが、保釈請求の許可/却下についても裁判における一つの判決ですので、控訴という形で文句を言い、判決のやり直しを再度求めることができます。
一言で裁判所といっても色々な種類があるので、まずはそちらを整理していきましょう。控訴に関係してくるのは大きく分けて「地方裁判所」「高等裁判所」「最高裁判所」の3つです。
地方裁判所(地裁):一番最初の裁判を担当する裁判所。保釈請求の許可/却下を最初に決めるのもここになります。
高等裁判所(高裁):地裁の決定が不服だった際に文句を言う相手。地方裁判所の上司みたいなものです。
最高裁判所:いわゆる最高裁、というやつですね。裁判所の中で最も偉い存在。ここで決定されたことはもう覆りません。
ですので、保釈請求が却下された場合には、「まず高等裁判所に文句(控訴)して」、それでもダメなら「最高裁へ文句(上告)する」という流れになります。
そもそもなぜ保釈が却下されるのか
弁護士から保釈請求が届いた後、裁判官は一人で保釈を判断しません。必ず検察官に「どう思う?」と意見を聞きます。ですので保釈が却下されるとしたら、少なくとも検察が嫌がっていると言えるでしょう。検察側の意見を加味して、裁判所が判断をすることになります。
保釈が却下されるには理由があります。以下によくある理由を紹介します。ただし、このリストに一つでも引っ掛かったら絶対保釈はNG、というわけではありません。
- 逃亡の恐れがある
- 住所不定である
- 証拠隠滅の恐れがある
- 外に出て罪を犯す可能性がある
- 重い、または継続的な犯罪である
どんなに反省していても殺人犯を保釈するわけにはいきません。逆に、高齢の老人などの場合は逃げる可能性も低く、保釈がされやすい傾向にあります。
麻薬で捕まった芸能人は一般人に比べて比較的すぐに保釈が許可されます。これは「芸能人は顔バレしてるから逃げられないよね」という判断が働いているためです。
控訴/上告で保釈却下の判決が覆ることはあるのか
結果から書くと、控訴や上告で地方裁判所が出した決定が覆ることはほぼありえません。よくドラマや新聞などで「逆転無罪」とか「一転して有罪判決が出た」という場面がありますが、それは事件の判決に関してであって、保釈の可否判断レベルのことで裁判所によって判断が変わることはかなりレアです。
少し語弊のある言い方になりますが、事件の判決については新しい証拠が出たり、追加の判断材料が加わることが多いのに対して、保釈の控訴/上告は残念ながらただの文句でしかないことが多いからです。保釈請求に対する判断はそれほど難しくない=高裁や最高裁でも判断が変わらない、と言えます。
もちろん100%というわけではなく、判断が変わることもありますが、留置人の年齢や国籍、健康状態など、かなりイレギュラーな判断要素がある場合に限られるのが実態です。文句を言えば結果が変わるというわけではないのです。
逆に言えば、検察側の控訴も意味がない
もし保釈請求が許可されて、その判決を検察側が不服とし、高裁に控訴したとします。
ダメダメ証拠隠滅する気だよ!
💢保釈だっつってんだろ
この場合も保釈決定が覆される(=保釈が取り消される)可能性はかなり低いです。そのくらい裁判所の保釈判断は覆せないものなのです。
では保釈請求を却下されて控訴/上告するのは意味がないのか
結果は変わらないので、そういう意味ではあまり効果はありません。
ここから書くことにはきっと反論もあるでしょうから、あくまで定性的(統計データではない)ものとして読んでください↓
裁判官も人です。ですから高裁や最高裁に「地裁の判断は間違っている!判断し直して!」と文句を言われるのはあまりいい気がしません。サラリーマンで言うところの自分の上司や社長に文句を言われているようなものなわけです。そうすると少なからず「あ、この弁護士めんどくさいな(=ちゃんとやらなきゃな)」という思考が働くようになります。
仮に保釈の判断を迷うような状況だった場合は、「弁護士がまた控訴してくるとめんどくさいからなぁ…」という思考が少なからず働く裁判官もいるのではないでしょうか。(もちろんそんなこと誰も認めませんが)。そういう意味だと「論理的な控訴は1,2%くらいは意味がある」と筆者は考えています。
とにかく控訴するは逆効果。保釈請求が却下されて、毎回文句(控訴)を言っていると、「この弁護士バカなんだな」とか「この弁護士むかつくな」と逆効果になってしまう可能性もあります。
「とにかく控訴しましょう」という意味で書いているのではなく、ちゃんと理論立てて控訴することで、次回の保釈請求の際に「あの弁護士相手に判断を間違えられないなぁ」とプレッシャーをかけることが目的であることを間違えないでください。
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